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janvier 17, 2006

「情報の積み木」展終了と、演習についての雑感

IMG_1566.JPG
昨日、「情報の積み木」展が無事終了しました。
多くのお客さんに来て頂いて感謝致します。

特殊な環境を設定する必要があるせいで、
会場が汚い端末室で申し訳ありませんでした。

多摩美の吉橋先生には、昨日の様子をブログでご紹介頂きました。
ありがとうございます。
日本の情報デザイン教育を切り開いてこられた方に、課題と学生の姿を褒めて頂いて、恐縮ながら嬉しかったわけですが、昨年専大に来てから、学生とコミュニケーションを取ったり、地道に観察したりして演習方法を考えてきたことが、なんとかかたちに表れてきたのかなと思います。

自分自身の振り返りも兼ねて、この課題をやるまでのことをちょっと書いてみたいと思います。

美術系の学生は、子どもの頃から絵を描いたり工作したりが大好きだったり、
また、教える方も「大事なことは自らが獲得していくことであって教えるようなもんじゃない」
という姿勢の場合が多いです。なので、基本的に課題を与えられたら、あとは口頭での対話や友人らとの競争意識で自然にエンジンがかかっていく学びの過程が普通だと思うのですが、情報学部ではなかなかそうはいきません。
・学生数が多く演習時間も短いので細かい対話が不可能
・自分を表現したいという強烈なモチベーションが(そこまで)あるわけじゃない
・パソコンワークだと周りの様子が感じれないため、周囲から受ける刺激が少ない
・経験が少ないので、そもそものやりかたが分からない
など、これまでの美大のような方法では課題だしてもうまく回らないわけです。

そういう問題から必要に駆られて、一種のワークショップのようなシステマチックな内容にせざるを得なかったわけですが、こういうやり方でなんとか進められたのは、基本的に学生が素直だったからと、自分らでも問題点を修正しあいやすい論理ベースの課題だったからだと思います。

ちなみに、課題のヒントにしたのは、インフォメーションアーキテクトの高山さんの文章です。

 >「情報を構造化して分かりやすくする」
 >以前から気になっていたのですが、情報の論理構造を重視して情報をグルー
 >ピングしたり、構成していくというトレーニングを行う場が世の中に少ない
 >ように思えます(情報構造を理解して書くという技術は物事の本質を考える
 >習慣に直結するでしょうから、本来こうしたトレーニングは学校教育で行わ
 >れてしかるべきと考えています)。


2年生という学年上、一生の基礎になるような能力を鍛えるべきで、それは何かといろいろ考えたのですが、CDコース生には情報デザインの中でも特にこういう分野を得意にして欲しいと思いました。

しかし、単純に論理の勉強ではモチベーションが続かないし応用も利かないので、立体ダイアグラムのような表現のノウハウやICタグとかFlashとかと組みあわせて、広げてみたわけです。昨年の経験から分かったのですが、ダイアグラムなどの論理の比重が大きい情報の表現は、情報学部でも十分に優れたものを作れます。

システマチックな流れの中で制作しているので、まだまだ自分で意志決定していく力が不足している点はあると思いますが、ものを作っていく中でちょっとづつ自信を付けて、考える力を獲得していってくれればいいんじゃないかな、と思います。


それと、もうひとつ強くイメージしていたのは、昨年の2年生だったI君の姿です。
彼はいつも全体説明が終わった頃にだるそうに現れて、その辺にいる学生に聞きながら適当に課題をごまかして帰るような、やる気の感じられない困った学生だったのですが、たまたま彼のいたグループがICカードの学内サービスを企画することになりました。そのとき、たまたま彼に「擬似的なカードリーダーぐらい作りなよ」とマウスの分解の仕方と簡単な仕掛けの説明をしてみたのです。すると、演習時間に教室を抜け出してアルミホイルを買ってきて、スイッチを拡張する実験を始めたのをきっかけに、徹夜で発泡スチロールを削るわ、スプレーで塗装するわ、マスキングを自分で編み出して表面のデザインするわ、あげくにはとうとうコンビニにあるような大きな筐体まで段ボールでつくって、カードシステムのデモができるようにしてしまいました。

それらは決して完成度が高かった訳じゃないけど、あのI君がここまで自分でやるとは、と感動すると同時に、もの作りのもつパワーや、内発的な動機が生まれるきっかけの大事さを思い知りました。


彼はグループで考えたサービスがなんだったかは多分もう忘れているでしょうが、あれを作っているときの試行錯誤の過程や、出来上がっていく時のワクワクする感覚、僕の研究室まで自慢しに見せにきた時のことはずっと覚えている気がします。そして、そういうことが自分に出来る、ってことは多分自分でもこれまで知らなかっただろうと思います。

今回の課題では、そんなような火がついた学生がたくさんいたような気がします。そうでなければ、どのチームの作品もあんなに作り込まれないでしょう。
モデルにしてもハンドアウトにしても、お金かからないようになるべく安くすませるかと思えば、自腹切ってでもこだわりを見せたり、演習室も設備もない中、条件の悪さを言い訳しないで、廊下や空きスペースでたくましくせっせと作業する姿には驚きました。

ドリルの凶暴な音に興奮する男子学生にも、サンドペーパーで素材を慈しむように磨く女子学生にも、そうか、手はマウスを持つために作られたのではないのだと、人間は今でも本能的に「ホモ・ファベル」なのだと、改めて気付かされます。

大学の演習は、立ち会う中で、教員としてもいろいろ発見したりしますが、今回の演習では、普段とは違う学生らの一面を見れた気がします。
そういう意味では僕も学ばせてもらいました。

今回の課題は、もやもやしたものに切り口を考え、徐々にかたちを与えて作りあげていく一連の過程が主ですので、正直言って見た人にとっては、心から面白いと思うまではもう一息なわけですが、次のステップでは、ユーザーのことを考えた視点へと繋いていけるでしょう。次年度のプロジェクトでは、この経験がうまく積み上がるといいな、と思います。

2年生のみなさん、お疲れ様。

最後に、お忙しい中ご来場頂き、会場で熱心にアドバイス下さいました多摩美の吉橋先生と学生さん、文書情報設計の高山さん、ベネッセ・教育研究開発センターの春田さん、どうもありがとうございました。
頂いた助言を次年度の演習に役立てたいと思います。

投稿者 kamihira : janvier 17, 2006 08:00 PM

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